結果表の見方
「基準値」 ・・・・健康な人の平均値です。
健康診断の検査結果は、「個人報告書」で知らされます。これは、検査データにもとづいて、 医師が健康状態を判定し、その所見を記入したものです。
検査結果の判定は、画像データなどで診断されるものもありますが、数値データは、「基準値」 をめやすに判定されます。
基準値とは、一般に健康と考えられている人の平均値をいいます。
ですから、基準値の範囲外 であれば異常で、範囲内であれば正常とは、一概にはいえません。
基準値はあくまでも一つの目安であり、基準値の範囲内であっても安心できないケースもあります。特に、基準値と異常値の境界あたりの数値の場合は注意が必要です。また、検査値が基準値外でも、病気が発症しているとは限りません。
まずは医療機関で受診して、詳しい検査を受けることが大切です。
検査結果は「総合判定」で評価される
血液検査の肝機能や腎機能などでは、多くの検査項目が設定されています。
これは、医師が、一つの検査結果で正常か異常かを判断するのではなく、それぞれの検査データを組み合わせて総合的に判定(総合判定)するからです。
検査結果の判定は、通常、次のような段階で示されます。
A | 異常なし | 特に所見は認めませんでした。 |
---|---|---|
B | 軽度異常 | 軽度の所見や治癒した所見を認めました。日常生活に心配ありませんが、指示があればそれに従い経過を見てください。 |
C | 経過観察 | すぐに受診する必要はありませんが、指示があればそれに従い経過を見てください。また、自覚症状などがある場合には一度医療機関を受診してください。 |
C1 | 生活改善6ヶ月 | 現在服薬等の治療的措置は必要ありませんが、生活習慣の改善等で疾病を予防しましょう。指示された時期に検査を受け、改善が見られない場合は医師の指導を受けてください。 |
C2 | 生活改善3ヶ月 | 同上 |
D | 要医療 | 医師の指導又は治療を検討してください。放置しないよう注意してください。 |
E | 要精査 | 治療の要否を確認するため詳しい検査(二次検査・精密検査)を受けてください。放置しないよう注意してください。 |
F | 判定不能 | 健診時に何らかの影響で正確な診断ができませんでした。再検査をお勧めします。 |
G | 現在治療中 | このまま治療を継続してください。関連する項目にも現在治療中の判定が付く場合があります。 |
「個人の基準値」に注目しましょう
健診結果表を受け取って、一通りざっと目を通すと、処分してしまう人がいます。
しかし、これでは健診を受けた意味がありません。
検査の数値は、ある時点のもので、食生活やそのときの体調で変わってきます。
特に血圧や血糖値などは変動しやすく、何回か測定しないと本当の状態はつかみにくいものです。
健診をより効果的に生かすためには、繰り返し健診を受けて過去の検査データを保管し ”自分にとっての基準値” を把握したうえで、その値の変化に注意することが大切です。
検査結果を自己判断するのは危険ですが、医師の診察や精密検査を受けたときなどに、現在と過去のデータを提示すれば、より正確な診断をするための材料となります。
特殊健康診断を受診された皆様へ
有機溶剤健康診断とは
アルコールやエーテル、シンナーやベンジン等のように、燃料として、あるいは塗料や接着剤、石油化学製品等の原料として、あるいは脱脂剤や強力な汚れ落し等として他の物質(鉱物や油脂など)を溶かす、有機化合物の液体全般をいいます。多くは火をつけると燃えます。またツーンとした臭い がするものが多く含まれます。工業的に使用されているものだけでも500種類以上あります。
有機溶剤のうち54種類のものについては、人体に有害なことが明らかになっており、有機溶剤健康診断を、半年に一度実施することが法律(有機溶剤中毒予防規則)で義務付けられています。
鉛健康診断とは
法律で挙げられている鉛健康診断の対象となる業務は、鉛そのものや、鉛を合金の成分や化合物として含むものの取り扱い作業は殆ど全て含まれています。鉛作業を行っている場合は、6ヵ月に一度、特殊健康診断を実施することが義務づけられています。
鉛や鉛化合物に長くさらされるとまず貧血症がよく起こります。他には食欲不振、便秘、腹痛等の症状や、手足のしびれやこむらがえり、関節痛や筋肉痛、だるさ、睡眠障害などが挙げられます。
じん肺健康診断とは
法律(じん肺法施行規則)に定められた粉じん作業をおよそ週1回以上行っている、または過去そうであった方が対象です。通常「粉じん」と言えば「ほこり」全般のことを指します。その中でも土石や岩石、金属などの鉱物性のほこりは、体内の水分に溶けにくい上に粒子がとがっているため、肺の防御機能による分解ができません。
するとほこりはその場に沈着し、炎症を起こしたり肺の組織が異常に厚くなったり、もろくなったりします。これが「じん肺」で、咳や痰、息切れ、呼吸困難、動悸等の症状が出たり、防御機能が弱くなるために結核や気管支炎を伴ったり、将来がんをも起こす危険性があります。そこで、溶接や採掘、坑内作業や金属の精錬・鋳造・切断等のような鉱物性のほこりを生じやすい24種類の作業は、法律(じん肺法施行規則)に定められた粉じん作業として、健康に悪影響が出ていないかチェックする必要があるのです。
また、特にがんは現れるまでに時間がかかるため、今は扱っていなくても過去に扱ったことのある方も受診することになっています。
特定化学物質健康診断とは
世の中に何万種類もの化学物質がある中で、人体に有害な物質は、有機溶剤の他にも、未知のものを含めてたくさん存在します。中でも、がんをはじめ、胎児の奇形、神経や循環器・呼吸器その他重要な健康障害を生じることが判明している、または疑いが強い物質は、その程度により製造禁止物質・第一類特定化学物質・第二類特定化学物質・第三類特定化学物質に指定されています。
これらを1%ないし5%以上、あるいは物質によってごくわずかでも含むものを使ったり作っている場合は、その物質別に出やすい害に合わせた検査項目の特殊健診を、半年に一度実施することが法律(特定化学物質等中毒予防規則)で義務付けられています。
また、特にがんなどのように、現れるまでに時間がかかる害を生じる物質については、今は扱っていなくても過去に扱ったことのある方も受診することになっています。
石綿健康診断とは
建設や造船の材料や耐火材などを中心に、幅広い分野で多く取り扱われていた石綿(アスベスト)による健康被害者が急増したため、平成17年に特定化学物質等障害予防規則から独立した新しい法律(石綿障害予防規則)に定められた健診です。※ここでいう「石綿」とは以下のものを指します。
●製造等禁止石綿:クリソタイル(白石綿、温石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)
検査の対象となるのは建設業、造船業、防火用品や建設資材を作ったり扱っていた方です。
石綿は繊維が細かく、空気中に飛散しやすいため、呼吸器から吸入されやすい特質を持っています。
一度肺に取り込まれると蓄積されやすく、数十年の年月を経て、肺線維症(石綿症)、悪性中皮種、肺がんなどを起こす可能性があることもWHOの報告で認められています。
対象者の方は事業所の責任で特殊検診を半年に一度実施することが法律で義務付けられています。
電離放射線健康診断とは
検査の対象となるのは、電離放射線を発生する装置を用いた検査や測定、原子炉の運転、放射性物質そのものや汚染された物の取扱い業務をされる方が挙げられます。電離放射線が及ぼす被害として、放射線を受けた直後~数日以内に発生するもの、数週間~数年経過してから発生するもの、流産や奇形等次の世代で発生するものの3つのタイプが存在します。対象者の方は線量の大小に関わらず半年に一度、電離放射線健康診断を実施することが法律(電離放射線障害防止規則)で義務付けられています。
紫外線・赤外線健康診断とは
紫外線も赤外線も光線の一種です。紫外線は水晶体のたんぱく質に吸収され、化学変化を起こして白く濁らせます。これが白内障です。赤外線は熱を持っている物から発生し、当たった物の温度を上げます。眼に当たれば紫外線同様に白内障の原因となります。
・紫外線に晒されやすい業務→溶接、アーク灯の操作、レンズやプリズムの調整等が挙げられます。
・赤外線に晒されやすい業務→ガラスや金属を700℃以上に灼熱させて加工する処理等が挙げられます。
このような業務の方は保護メガネを着用すると共に、定期的に眼の状態をチェックするよう心掛けて下さい。
VDT健康診断とは
VDT作業とはパソコン等の機器で文章・画像の作成やデータ入力、プログラミングなどを行う作業です。VDT作業による疲れは一見少なく見られますが、目や視神経、首・肩・腕・手・指・腰などの筋肉に集中して負担がかかります。またストレスが溜まりやすい作業でもありますので周囲の環境や休憩の取り方が不適切だと、手指の痙攣、関節の炎症(腱鞘炎など)、頭痛、食欲減退、不眠などの症状に陥ることもあります。
労働基準局では従来の規定を強化し、上記の症状がある人はそれがVDT作業の影響なのかを判断し、必要であれば、職場全体の環境の改善や対策の推進を指導しています。
騒音健康診断とは
騒音が人体に与える悪影響として第一に挙げられるのは、難聴です。
一般的な難聴と異なり、職業性難聴は会話よりもずっと高い音(4000Hz)から聞こえにくくなり始めるため、初期には気付きにくいという特徴があります。
聞こえの悪さがかなりハッキリして、異常に気付いた時点では既に進行してかなりの割合の聴覚細胞が死滅している場合が多く、死滅する聴覚細胞が増加して難聴が進行することはあっても、治すことは不可能です。そのため、作業環境測定で実際の音の大きさをチェックするとともに、高音域の聴力についてもチェックできる騒音健康診断を実施し、できるだけ治せる時点で早期発見することが大切です。
腰痛健康診断とは
重量物取扱い作業、介護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際、(再配置する際を含む)及びその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に次の通り医師による腰痛健康診断を実施することになっています。具体的な対象となる業務は、下記の5つです。
①重量物取り扱い作業
②重症心身障害児施設等における介護作業
③腰部に過度の負担のかかる立ち作業
④腰部に過度の負担のかかる腰掛け作業・座作業
⑤長時間の車両運転
また、健康診断では既往歴や業務歴の調査に加えて、腰痛・下肢痛などの自覚症状の調査を行います。